家康様の借金ではございません!「ショーグン債」とは?

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バーチャル商業大学教授のレインディアです。いつもご視聴いただきありがとうございます。

今日は私の研究室に、大学生がやって来るそうです。

鹿瑠仁:「教授、大学生の損こっ君が、ラウンジに来ていましたよ~。」
レインディア:「わかりました。それでは早速、ラウンジに向かいましょう。」

鹿瑠仁:「こんにちは、損こっ君。久しぶりだね。」
損こっくん:「こんにちは。先日はサムライ債に関する授業、ありがとうございました。今日は、ショーグン債という債券について教えて欲しくて…。」
レインディア:「もちろんだよ。それでは今日も新聞記事を参考にして解説することにしましょう。」

レインディア:「これは、1994年2月7日の日本経済新聞の朝刊です。この中に、ショーグン債に関する記事がありました。」
鹿瑠仁:「『銀行の証券子会社、外債引き受けで攻勢、開業後半年間で24件の幹事獲得。』という記事タイトルで、シンジケート団などについても解説していますね。」

まず、債券とは、資金調達の際に発行される証券の一種で、その証書の中では発行体と投資家との約束事が決められています。まず、発行時には、投資家が購入時に発行体へ資金を支払います。また、利払い時には、発行体が予め定められた期日に投資家へ利息を支払います。最後に、償還時には、発行体が予め決められた期日に投資家に元本である額面金額を返済するんですよ。

ここで、債券の基礎情報には、これから解説する5つの要素があります。まず、債券発行体と投資家との主な契約条項として、額面金額、利率、利払い日、償還日の4つがあります。額面金額は、債券の券面に記載されている金額で、償還時に発行体から投資家へ支払われる金額を指します。次に、利率は額面金額に対して支払われる利息の割合として定義されています。また、利払い日は利息が支払われる日で、償還日は満期日に対応する言葉で、額面金額と最後の利息が支払われるんですよ。

債券の基礎情報の最後の項目として、墓石広告について解説しましょう。墓石広告は、証券の発行などに際して、幹事金融機関が新聞などに掲載する広告のことで、ツームストーン広告とも呼ばれています。これは、実際の墓石に故人の情報が刻まれているように、債券の売り出しなどの際に、その情報を記載していることに類似しているためです。ただし、売り出す証券に関する情報については、法律の規制によって、事実だけを文章のみで公示する形となるんですよ。

それでは、ショーグン債の解説に入りましょう。ショーグン債は、正式には、「東京外貨建て債」とも呼ばれるもので、海外の発行体が日本国内で募集・発行する外貨建ての債券を指します。ショーグン債では、金利が通常の外貨建て債券と同水準で、資金の払込みや利子の支払い、元本の償還も全て外貨で行われます。その際、国内債と同じく、利子源泉課税が適用されます。また、ショーグン債は、発行場所が日本というだけで、その性質は通常の外貨建て債券と基本的に同じです。ただし、ショーグン債は、資金の払い込みや利払い・償還などすべて外貨で行われるため、為替レートの変動に影響を受けます。こうしたショーグン債は、1985年に、世界銀行が米ドル建て債券を発行した際などに、発行数が増加しました。また、ショーグン債は、発行通貨は米ドルが多いですが、ユーロ建てや豪ドル建てなど、幅広く発行されています。そこで、ショーグン債の海外発行体(非居住者)として、国際機関、外国政府や政府系機関、外国民間企業が主なものとして挙げられます。

次に、ショーグン債の特徴についてみてみましょう。ショーグン債は、発行通貨の自国以外の市場であるユーロ市場で発行される債券であるため、ユーロ債の1つに位置づけられます。ここで、ユーロ債は、「ユーロボンド」とも呼ばれ、発行通貨の国内(自国)市場以外のマーケットであるユーロ市場で発行される債券を指します。また、ユーロ市場は、ロンドンやルクセンブルクなど、ヨーロッパで発展してきた経緯に由来する呼称です。現在、ユーロ市場は、自国市場に比べて規制が緩く、発行条件を比較的自由に設定できるなどのメリットがあります。こうしたユーロ市場の主な種類として、通貨取引の「ユーロカレンシー市場」、貸借取引の「ユーロクレジット市場」、債券取引の「ユーロ債市場」の3つの市場が挙げられます。

ここで、ショーグン債とサムライ債について比較してみましょう。まず、これら2種類の債権の共通点として、発行体が、国際機関、外国政府や政府系機関、外国民間企業であり、どちらも、外国債券(非居住者発行債)に位置づけられます。一方、これらの相違点として、ショーグン債は、外貨建てで発行されるため、為替変動リスクがあります。また、ユーロ債の1つにも位置づけられています。それに対して、サムライ債は、円建てで発行されるため、為替変動リスクはありません。

次に、ショーグン債の投資リスクについてみてみましょう。まず、信用リスクがあります。これは、債務不履行リスクあるいはデフォルトリスクとも呼ばれています。この信用リスクは、お金を貸した先が債務を履行して元本や利息を支払うことができなくなるリスクを指します。次に、価格変動リスクがあります。ショーグン債は、償還日に額面金額が償還されますが、途中で売却する場合はそのときの時価で売買することになります。そのため、売却金額により損益が変動することで収益率が変動するという、価格変動リスクがショーグン債にもあります。また、ショーグン債には、流動性リスクもあります。流動性リスクとは、日々の取引量が少ない場合、償還日までに債券を購入または売却することが困難になるリスクを指します。最後に、ショーグン債は外国債券であることから、為替変動リスクがあります。そのため、円と外国通貨の為替相場の変動により、ショーグン債(外貨建て資産)の価値が変動するというリスクが孕んでいます。

最後に、ショーグン債における為替変動リスクについて、詳しくみてみましょう。ショーグン債には、円と外国通貨の為替相場の変動により、円ベースでの償還金額に不確実性が存在します。例えば、米ドル建てのショーグン債に120万円投資するケースについて考えてみましょう。まず、投資開始時において、為替相場が1米ドル=120円であるとすると、1万米ドルをこのショーグン債に投資したことになります。ここで、償還時において、2つのケースについて考えてみましょう。まず、1米ドル=125円という円安方向に為替レートが動いた場合、額面金額は円ベースで125万円になりますので、差し引き5万円のキャピタルゲインが得られたことになります。一方、償還時において、1米ドル=110円という円安方向に為替レートが動いた場合、額面金額は円ベースで110万円になりますので、差し引き10万円のキャピタルロスが生じたことになります。このように、ショーグン債のような外国債券には、為替変動リスクが潜んでいます。また、こうした為替変動リスクは、インカムゲイン(利息)にも存在しているんですよ。

今回の授業を締め括るにあたり、最初に紹介した新聞記事について解説することにしましょう。金融制度改革を受けて、1993年7月下旬に営業を始めた銀行の証券子会社は、サムライ債(円建て外債)など、外債の引き受け主幹事や幹事の座を次々と獲得していました。具体的には、1994年1月末までの開業後半年間で日本興業銀行系の興銀証券、日本長期信用銀行系の長銀証券、農林中央金庫系の農中証券の3社で合計24件のサムライ債、ショーグン債(外貨建て外債)の引き受け幹事を獲得し、このうち三件は主幹事になりました。また、普通社債(SB)では幹事団入りにとどまっていますが、外債の引き受けでは大手証券4社による寡占状態を崩す勢力になってきていました。このように、銀行系の証券子会社が外債の引き受けに強いのは、長銀や興銀などの親銀行が、外債の受託業務で実績を積んでいたのが主因とされていました。これは、普通社債(SB)は、親銀行の影響力を排除するため証券子会社の引き受け業務には規制があり、発行企業も引き受け主幹事を選ぶ際には、証券会社との長年の取引関係を重視するためでした。それに対して、外債の場合はこうしたしがらみが少なく、新規参入組がシェアを獲得しやすいという面がありました。

こうした背景を踏まえて、興銀証券は、マレーシアの国営石油会社とドイツの政府系金融機関が発行したサムライ債で、いずれも引き受け主幹事を獲得しました。この他にも、サムライ債で幹事団入りが9件、引き受けシンジケート団入りが9件ありました。ここで、シンジケート団とは、大型の資金調達に際して、シンジケート・ローンや新たに発行される有価証券の引き受けのために、複数の金融機関で結成される団体を指します。また、長銀証券は、デンマークの天然ガス供給公社のショーグン債の主幹事を獲得し、サムライ債では幹事団入りが9件あり、シンジケート団入りが9件ありました。このように、両社は、1993年秋以降に発行されたほとんどのサムライ債について、何らかの形で引き受け業務に顔を出していました。さらに、農中証券も、外債の幹事が3件、シンジケート団入りが7件ありました。この他にも、1993年11月に営業を始めた住友信託銀行系の住信証券、三菱信託銀行系の三菱信証券も、開業後3カ月でそれぞれ数件のシンジケート団入りの実績があったんですよ。

レインディア:「いかがでしたか?ショーグン債は、海外の発行体が日本国内で発行する外貨建て債券のことなんですよ。」
損こっくん:「よく分かりました。次回も、債券について教えて下さいね。それまで、別の投資先も考えてみます…。今日はありがとうございました。」

レインディア:「ん!?さっき、別の投資先を…、とか言ってなかったかい?」
鹿瑠仁:「また怪しい投資に手を出して、大損しないといいのですが…。」
レインディア:「損こっくんの場合は、まずは自分に投資して欲しいんだけど…!」

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バーチャル商業大学では、毎回、個性的な学生から寄せられる質問について、レインディア教授と鹿瑠仁(しかるに)助手が懇切丁寧に解説します。

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最後までお読み下さりありがとうございました。また次回の授業でお会いしましょう。

投稿者: Professor-Reindeer

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